カメラマンの知恵

カメラマンの方に役立つ話を書いていきます

週末カメラマンのうちに知っておきたいカメラと写真の話



 

カメラマンを目指している人も、現役でカメラマンをしている人も、カメラにあまり詳しくない人が意外と多いです。ということで、今回はカメラマン志望の人、又は現役カメラマンだけど機材に疎いという人向けに、最低限知っておきたい話やちょっとマニアックかもしれないけど知っておきたい内容をまとめてみたいと思います。

 

写真に対する画素数の影響

必要な画素数はそれ程多くはない

まず、画素数は実際にどれぐらい必要なのか?正直、1000万画素で十分なケースがほとんどです。なぜなら、通常の鑑賞距離を考えると800万画程度で十分だからです。それ以上は、写真に近づいて細部を見るような鑑賞をしない限り差は大きくありません。

 

もちろん、細部をクローズアップしても解像しているような写真が必要な場合は3000万、4000万画素という画素数が必要になるかもしれませんが、そのような写真が必要になるケースは稀です。なので、最近の2000万画素前後の画素数のカメラなら、画素数としては十分過ぎます。

 

ちなみに、印刷サイズに対して必要な画素数の求め方ですが、まず前提の知識として、

 

 ①一般的に人が感じ取れる最大の解像度は300〜350dpi。

 

②dpiとはdot per inchの略で、画像や印刷物のきめ細かさ、つまり解像度を示す単位のことで、1インチ(=2.53999センチ)の幅に何個のドット()が含まれているのかを表し、数値が大きいほどきめ細かいことを意味する。

 

以上のことを理解しておかないといけません。つまり、300dpiなら1インチである2.54cmの長さに300個の画素が並ぶということですね。これを理解しておけば、印刷サイズが分かれば必要な長編の画素数が分かります。例えば、A4サイズで計算する場合。

 

A4用紙の長編29.7cm ÷ 2.54cm × 300dpi = 3508

 

となり、長編が約3500の画素が必要になります。イメージセンサーの比率が2:3であった場合、3500 × 2333の画素数となり、約800万画素必要になりますね。この計算で行くと、印刷サイズがもっと大きくなれば必要な画素数も多くなりますが、実際には印刷サイズが大きくなると鑑賞距離も長くなります。なので、1000万画素あれば十分だったりします。トリミング等を行ったり、多少近づいて見ても大丈夫なことを考えても1500〜2000万画素あれば十分です。

 

画素数が画質を左右する?

一昔前は、画素数が少ない方が高画質という傾向がありました。この傾向は現在でも変わっていませんが、基本性能が向上し高画素になるにつれてノイズ自体が小さくなることも相まって、高画素デメリットが相殺されるようになりました。なので、現在では画素数が多いことの弊害はほぼないと認識していいと思います。

 

フルサイズだから良い写真が撮れるわけではないし、フルサイズだから高画質とは限らない。プロだからフルサイズが必要というのは一昔前に認識になりつつある

カメラマンならフルサイズ、なんて風潮があります。趣味でされている方の間でも、ステップアップでフルサイズという方も多いです。ですが、それはもう古い認識です。なぜなら、特殊なケースを除き、フルサイズでなくてもほとんどのケースで十分な写真が撮れるようになったからです。

 

一昔前は、画質的にもカメラの性能的にもフルサイズ一眼レフの方が良いケースが多かったのですが、むしろシチュエーションによってはフルサイズよりもマイクロフォーサーズの方が高画質になることが多々あります。

 

 

こちらの記事でも詳しく解説していますが、フルサイズの高感度性能の優位性は約2段です。しかし、フルサイズとマイクロフォーサーズは被写界深度の差が2段あるので、マイクロフォーサーズは常に絞りを2段開けて撮ることができます。その為、ISO感度を2段落として撮影できるケースが多く、フルサイズの優位性が相殺されます。

 

また、手振れ補正はフルサイズよりもマイクロフォーサーズの方が強力なことが多いので、フルサイズの優位性が相殺されれればマイクロフォーサーズの方が高画質に撮れるケースが多いです。

 

もちろん、三脚撮影や動いている被写体を止めるような撮影を行う場合はフルサイズの優位性が目立ってきますが、そのような撮影が少ない場合はマイクロフォーサーズの方がメリットは大きいです。また、屋外で機材を小型軽量化したいというカメラマンにとってはフルサイズよりもAPS-Cやマイクロフォーサーズという選択の方が有力になりますね。

 

【カメラマンならキヤノン・ニコン】はもう古い

先ほどのフルサイズの話の延長にもなりますが、カメラマンだからキヤノンかニコンを使わないといけないというのももう古い話になりつつあります。一昔前は、キヤノンとニコン以外は残念ながら仕事では使えないというレベルのカメラやレンズのラインナップだったので、キヤノンかニコンを使わざるをえないという状態でしたが、今は違います。

 

ソニー、パナソニック、オリンパス、富士フイルム、ペンタックスは、それぞれ独自の強みに特化したシステムを構築しカメラマンであっても適材適所で自分に合う機材を選択し撮影しています。

 

とくに、ソニー、パナソニック、オリンパス、富士フイルムの4社はミラーレス一眼の基本性能を向上させ、一眼レフで足枷となっていたカメラとレンズの個体差による前ピン後ピンの現象を解消しました。ミラーレス一眼は合焦時にコントラストAFで合わせるので、撮影者が使い方を間違えなければピント精度はとても高くなります。

 

その為、動く被写体を撮るのでなければ、一眼レフを選択するメリットは少ないでしょう。そういう意味でも、カメラマンならキヤノンかニコンという時代は終わり、撮影する被写体や撮影スタイルによって機材を選択できるというカメラマンにとってはありがたい時代が始まっています。

 

もちろん、人それぞれの価値観が違うので、便利で小型軽量のミラーレス一眼でなくゴツくて重い一眼レフの方がモチベーションが上がるという人もいますし、電子ファインダーではなく光学ファインダーの方がいいという人もいます。それはそれでいいのです。自分が納得できモチベーションが上がる機材で撮影することは何より大事なことです。ただ、僕がお伝えしたいのは良し悪しだけでなく、キヤノン・ニコンがダメということではなく、

 

選択肢が豊富になったので昔の慣習に縛られて知識を狭めないで下さい

 

ということです。

 

現在の選択肢の豊富さを知り、理解し、検討して選択したなら、それがその人にとっての良き相棒となります。そこに口を挟むつもりは全くありませんが、なんとなくで選択していたら自分に一番ベストな選択にすら気づけないかもしれません。それは少し勿体ないです。

 

カメラが自分に合っていないということに気づかずにカメラの悩みを抱えながら撮影するより、自分が信頼でき、気に入った相棒でモチベーションを高めて気持ちよく撮影する方がいいに決まっています。その為の選択肢が、今の時代は十分にあるということを知ってほしいのです。

 

仕事で一眼レフを使うならキヤノンかソニーが安心

先ほども触れましたが、一眼レフではカメラとレンズの組み合わせ次第でピント精度が安定しない前ピン後ピンの現象が発生します。又、一つ一つのAF測距点によって精度のバラツキがある為、普通に使っている分にはAF精度がなかなか安定しません。背景が大きくボケないような環境ではそれほど気にせずに撮影できますが、単焦点レンズを使った場合などは顕著にAF精度のバラツキを感じることができます。

 

これの問題を解消できるのが、キヤノンとソニーです。キヤノンは別の記事でも書いていますが、PDA GALLOPというキヤノン専門で修理・メンテナンスを行う会社でチューニングを依頼すれば、メーカーの基準値以上の精度にすることができます。

 

PDAさんのところには全国のカメラマンからの直接依頼がありますが、多くのカメラマンから絶大なる信頼を得ています。僕もキヤノンの一眼レフを使っていた頃は一度お願いしたことがありますが、AF精度は前ピン後ピンは完全に解消され、AF測距点毎にバラツキも無くなります。プロ専門なので一般の人は依頼ができないみたいですが、キヤノンのカメラでカメラマンとして活動していくなら、PDAさんに依頼しない理由は一つもありません。それほどに完璧な精度で仕上がってきます。

 

ソニーの場合は、キヤノンのようなメンテナンスを行うことはできませんが、ソニーの一眼レフには像面位相差AFが採用されています。この記事を書いている時点ではフルサイズのα99Ⅱにしか採用されていませんが、像面位相差AFのおかげで85mmの焦点距離でF1.4で人物の半身を撮影した時でも、ほぼ全てのカットで目にピントが合います。85mm F1.4で半身を撮影したら被写界深度はかなり狭くなりますが、それでも安定してピントが合うのは像面位相差AFのおかげです。チューニングしてもらったキヤノン以外でこのような精度を維持できるのはソニーだけでしょう。

 

残念ながらレンズラインナップが充実しているとは言えず、高価なレンズばかりでミドルクラスのレンズが少ないですが、最低限のレンズは揃っています。また、キヤノンのようにいちいちチューニングにカメラとレンズを預ける必要がないので、ソニーの方が楽と言えば楽ですね。

 

その他にもニコンとペンタックスが一眼レフを販売してますが、ニコンの一眼レフでもシビアなAFになると精度に不安があるという声も多数あります。なので、ニコンユーザーのカメラマンはキヤノン専門のチューニングができることを羨ましがっている状況です。ペンタックスに関しては、正直なところAFを過信できません。最新のK-1やKPでは少しずつ改善されているものの、やはりAFを頼る仕事では不安が残ります。

 

その結果、僕が仕事で一眼レフを使うならキヤノンかソニーです。個人的には電子ファインダーのメリットを体感しているので、一眼レフを買うとしたらソニーがいいですね。軽量で使いやすいレンズがないのは難点ですが...。その点、ミラーレス一眼にすればレンズの選択肢が豊富なのでありがたいですね。

 

カメラやレンズと同等に、RAW現像スキルとモニターのRGB再現率に投資する

週末カメラマンさんに多いのは、カメラやレンズ等に投資してもRAW現像スキルと現像環境に投資をしないことです。投資というのは何もお金だけでなく、スキルを磨く時間のことも指します。

 

現像スキルの必要性を感じていないから投資を行わないのかもしれませんが、現像スキルの必要性を理解していないというのはそれだけ写真撮影に対するスキルがないと公言しているようなものです。一般の人には良く見えても、普段プロの写真を見慣れている編集者や他の腕のあるカメラマンなら現像スキルがないのはすぐに分かります。

 

先ほど、現像環境と書きましたが、これは主にRGBカバー率の低いモニターを使っているかどうか、そのモニターをしっかり調整しているかどうかという意味です。現像環境が悪いと、色合いがおかしかったり、被写体が白飛びしていたりと、分かる人には分かってしまいます。

 

なので、RAW現像スキル等に投資しないと、いつまでたっても目の肥えてない顧客からしか依頼が来ず(つまり、貴重な収入源となる出版や広告、印刷業界の編集者からの依頼が来ない)、また自分自身よりも腕の良いカメラマンに仕事を取られてしまう可能性が高くなっていきます。周りを気にしすぎるのも良くありませんが、RAW現像スキルがないというのはそれ以前の話ではないかと思います。

 

現像時はDropboxでリアルタイムにインターネット上にバックアップを

撮影後はパソコンで写真を整理し仕上げの現像を行いますが、パソコンが急に動かなくなったり故障したりした時でも、次のパソコンで続きから作業ができる。Dropbox等のクラウドストレージサービスを使えば、そんなことも可能です(以下の話は、ドロップボックスの有料プラン「Dropbox Plus」を契約していることを前提の内容です)。

 

僕が撮影した写真をパソコンに取り込む時、パソコンにインストールしてあるDropboxの中にコピーします。Dropboxにデータが入った時点ですぐにインターネット上にコピーされ、フォトショップで写真一枚一枚にラベルをつけた時やRAW現像が完了した時、PSDデータに上書きした時等も即インターネット上にコピーしてバックアップしてくれます。

 

仕上げをして納品したデータなどは、外付けのHDD等にコピーしてパソコン内のデータを削除しますが、削除してからも1ヶ月はインターネット上にバックアップが残っているので、間違えて決してしまっても安心です。

 

ちなみに、僕はGoogleドライブを納品専用のクラウドストレージとして利用しています。有料ドメインをGoogleで取得してGmailを利用している為、Googleドライブにアップロードしておけば外出先でスマホからでも納品ができるので便利ですね。

 

手振れ補正やライブビュー等、デジタル時代の機能を最大限活かす為に固定概念を捨てる 

写真をやっている人の中には、様々な自分ルール・拘りを持っている人がいます。そのような人も気持ちももちろん分かりますし、その拘りによって良い写真が撮れているなら何も言うことはありません。

 

しかし、まだ経験が浅い人がそのような人の言葉を真に受けて、経験もしていない、よく理解してもいないうちに固定概念が出来上がってしまうケースがあります。正直それは勿体ないです。

 

とくに、フィルム時代から写真撮影を続けている人の中に時々、

 

【電子ファインダーや手振れ補正、AF、可動式モニター等に頼るなんて腕がない証拠】

 

と発言したりするケースもあります。ですが、良い写真を撮り腕がある人程最新のカメラ機能を使いこなしています。いろんな人の意見や考え方を取り入れ参考にしていくのは良いことですが、自分が経験もしていない、きちんと理解もしていないものに対して固定概念を抱くのは止めましょう。

 

時代は変わっていきますが、それについてこれない人は必ずいます。そしてその変化の中で、小言を言う人は必ず一定人数存在するものです。どんな機材でどんな写真を撮ろうが、それは撮影者の自由なのです。もちろん、依頼されて撮る場合は依頼主を満足させることが最優先ではありますが、自分に必要な機材や機能は自分で見極められる意識を持っていたいものですね。

 

シグマ・タムロン等のサードパーティのレンズはミラーレス一眼で使うのが一番安心

一眼レフは前ピン後ピンの問題があるだけでなく、AF測距点毎に精度が異なることは先ほど触れました。その続きになりますが、サードパーティのレンズは純正レンズ以上に測距点毎にバラツキがあるという印象です。僕自身試したことはないのですが、周りのカメラマンの声としてやはり純正の方が安定感があるというのはよく聞きます。

 

高倍率ズーム等なら、多少精度が安定しなくてもピントが合うケースがほとんどでしょう。ただ、単焦点レンズを使うなら、ミラーレス一眼で使うのが一番安心です。ミラーレス一眼ならコントラストAFなので、精度のバラツキはほぼ無くなります。シグマのレンズも、シグマのアダプターを使うことでソニーのフルサイズミラーレス一眼に取り付けられるようになりました。

 

あと2年か3年後ぐらいにはソニーのフルサイズミラーレス一眼用のレンズも出てくるようですが、今でも使えるレンズはいろいろあります。とくに単焦点レンズでポートレートをメインで撮影される方は、ミラーレス一眼で撮影されるのが一番かもしれませんね。

 

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親指AFは万人に役立つものではない 

親指AFは便利!

 

一度は聞いたことがあるかもしれません。しかし、AFエリアをよく変更する人にとって親指AFは不便です。想像してもらうと分かりますが、親指でAFエリアを移動させて、AFをボタンを押して、シャッターを切る。という動作になるからです。シャッターボタン半押しでAFが作動するようにしておけば、親指はAFエリアの変更に専念できます。

 

親指AFにしておけばAFとシャッターが切り離せるというメリットもありますが、これは何も親指AFでなくても行えます。カメラ側にAFストップ機能をファンクションボタンに割り当てたり、レンズ側のボタン操作でも行えます。

 

親指AFは主に動体撮影をする時や、フォーカスロックをよく使うという人には便利な機能です。ですが、フォーカスエリアを頻繁に変える人にとってはあまり便利でないので注意が必要です。当たり前と言えば当たり前ですが、使いやすい機材や設定は人それぞれ用途によって違います。他人の知恵を知ることも重要ですが、自分で考えて自分だけのノウハウを見つけていかなくてはいけません。

 

最後に

ざっと思いつくことを思いついた順番に書いてみましたが、如何でしょうか。また思いついたらこの記事に追記していきたいと思います。