カメラマンの知恵

カメラマンの方に役立つ話を書いていきます

週末カメラマンさんでよくある機材の悩み



僕の写真講座の受講生さんの中には、写真が趣味の一般の方はもちろん、これからカメラマンを目指す人や駆け出しカメラマンの方もいらっしゃいます。時々そんな方から【週末カメラマンだけど近い将来カメラマンとして独立したい】という方の相談メールを頂くことがあるのですが、今回はその相談でよくアドバイスさせて頂くことをご紹介してみたいと思います。

 

 

機材を揃える前に知っておきたいこと

週末カメラマンだけに限らず、カメラマンとして独立している方でもカメラやレンズの幅広い知識をお持ちの方は少ないです。

 

・自分が持っているカメラやメーカーのことしか分からない

・師匠が使っていたメーカーをそのまま自分も使っている

 

そんなケースは意外と多いですね。なので、週末カメラマンさんからの相談でも、機材のアドバイスはほぼ毎回させて頂きます。そんな中で多いのが、まずは各メーカーの得意不得意をまず知ろうということ。

 

一眼レフとミラーレス一眼の違い。各メーカーの違い。その中でも、被写体別、撮影環境別にオススメカメラをピックアップしていきます。ざっくり言えば、スポーツ写真を撮るなら一眼レフ。動く被写体を撮らないならミラーレス一眼です(ただ、オリンパスのE-M1 MarkⅡやパナソニックのGH5等の最新機種では、動く被写体もかなりの精度で撮影できます。超望遠を小型軽量で撮影できることから、動く被写体を撮影する方もオリンパスやパナソニックの機材を使われる方が増えてきました)。

 

なぜミラーレス一眼なのか?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、一眼レフだとカメラとレンズの組み合わせによる前ピン後ピンという現象に悩まされずに済むからです。僕も、キヤノンの一眼レフを使っていた頃はよく悩まされていました。カメラ側で微調整することである程度ズレを補正することはできますが、コントラストAFを採用しているミラーレスだといちいちテストする手間も省けますし、精度も安定しています。なので、動いている被写体をメインに撮る人以外は、基本的にミラーレス一眼がオススメです。

 

ミラーレス一眼なんて仕事では使えないよ

 

と言う人がいたら、その人はミラーレス一眼でちゃんと撮影したことがない人かもしれません。ミラーレス一眼を使ったことがある人なら分かるはずですし、現にカメラマンでも一眼レフからミラーレス一眼にメイン機材を変えている人が増えています。

 

ちなみに、一眼レフならキヤノンがいいですよという記事も書いています。併せてご覧下さい。

 

  

さて、ミラーレス一眼の選択肢はソニー、富士フイルム、オリンパス、パナソニックになります。この4つのメーカーから選択する際に考えたいのが、手ぶれ補正の有無です。富士フイルムはレンズ側に手ぶれ補正を採用していますが、ズームレンズは全て手ぶれ補正が搭載されているものの、単焦点レンズには手ぶれ補正は搭載されていません。三脚を多用する、又はISO感度をそこまで上げなくてもいい環境でしか撮影しないということであれば、富士フイルムも選択肢に入りますが、そうでない場合はボディ内手ぶれ補正がある方がありがたいですね。僕は仕事でオリンパスのE-M1を使っていますが、ボディ内手ぶれ補正には何度も助けられています。

 

なので、全てのレンズで手ぶれ補正が利用できるボディ内手ぶれ補正を採用しているカメラを選ぶなら、富士フイルム以外のソニー、オリンパス、パナソニックになります。ボディ内手振れ補正が実用的であるという基準で言えば、

 

ソニー

α7Ⅱ

α6500

 

オリンパス

E-M1 MarkⅡ

E-M1

E-M5 MarkⅡ

 

パナソニック

GH5

GX7 MarkⅡ

 

この辺りが自然とピックアップされますね。ここでフルサイズにするのか、それともAPS-Cにするのかマイクロフォーサーズであるオリンパス・パナソニックにするのか。どれにするかを考えた時、まず最初に浮かぶのが機動性と解放F値のバランスです。

 

フルサイズにする一番のメリットは35mm判換算F2.8のボケ量がズームで使えること

フルサイズのF2.8は、APS-CのF1.8。マイクロフォーサーズのF1.4と同じ背景のボケ量です。つまり、APS-Cやマイクロフォーサーズで使う単焦点レンズがフルサイズならズームで使えることになります。その分、レンズ単体の重さもかなりのものになります。APS-C・マイクロフォーサーズの単焦点レンズが数本分がまとまっていると思えば当然の重さになりますが、正直なところ常に800〜1400g程度のレンズを持ち歩いているとしんどいです。個人的にはレンズが重くてしんどいのはモチベーションに影響するので、ズームレンズの利便性を求める際は機動性重視になります。僕がキヤノンのフルサイズ一眼レフからマイクロフォーサーズに変えたのもその為です。

 

今の時代、画質はAPS-Cでもマイクロフォーサーズでも十分なので、フルサイズにするかどうかの一番の理由はレンズの選択になるかと思います。重さや大きさを無視してでもフルサイズのF2.8のズームが必要なのか?もし必要ならフルサイズがいいでしょうし、そうでないならAPS-Cやマイクロフォーサーズの方がいいでしょう。

 

ただ、APS-Cであるソニーのα6500でも、シグマの18-35mm F1.8、50-100mm F1.8を使えば、35mm判換算F2.8のボケ量をズームで使えることになります。18-35mm F1.8でAF後にマニュアルフォーカスでピント合わせができないこと、望遠側が35mm判換算で150mmになることが問題でなければ、この選択肢でもいいかもしれませんね。

 

35mm判換算F2.8のボケ量は単焦点レンズでいいという場合はマイクロフォーサーズの方がメリットが大きい

35mm判換算F2.8のボケ量が単焦点レンズでいいなら、選択肢は豊富です。APS-Cでもいいですし、マイクロフォーサーズでもいいでしょう。小型軽量で言えば、ソニーのα6500とEマウントレンズの組み合わせはかなり軽量化できます(下記の記事参照)。

 

 

操作性に拘るなら、使い勝手の良いE-M1かE-M1 MarkⅡがオススメです。ファンクションボタンの位置もよく考えられていて、全てのボタンが押しやすいです。使い勝手の良さを十分に配慮しながら小型軽量になっているので、E-M1系は一般の方にもプロの方でもユーザーは多いですね。

 

 

 

マイクロフォーサーズは背景がボケないとよく言われますが、僕も使っているマイクロフォーサーズ用のノクトンの単焦点レンズは開放絞り値がF0.95なので、35mm判換算でF2相当のボケ量になります。ノクトンのレンズは、

 

10.5mm (21mm

17.5mm(35mm

25mm(50mm

42.5mm(85mm

 

※()内は35mm判換算

 

の焦点距離があります。このうち、僕は標準と中望遠レンズを多用するので、25mmと42.5mmを持っています。望遠単焦点レンズを使いたいということでなければ、マイクロフォーサーズでも十分背景をボカすことができますね。ノクトンのレンズはマニュアルフォーカスですが、電子ファインダーが採用されているE-M1ならピーキング機能を使うことで拡大表示にしなくてもほとんどピントが合いますし、止まっている被写体なら拡大機能を使うことで正確なピント合わせが可能です。

 

 

また、こちらでも解説していますが、フルサイズはマイクロフォーサーズに比べて約2段分の高感度性能の優位性がありますが、フルサイズとマイクロフォーサーズの被写界深度の差は2段です。なので、マイクロフォーサーズは常に絞りを2段開けて撮ることができるので、ISO感度も2段落として撮影することができ、フルサイズの優位性は相殺されます。

 

その上、マイクロフォーサーズの手振れ補正は強力なので、マイクロフォーサーズの方が高画質で撮影できるケースも多々あります。

 

もちろん、三脚撮影や動いている被写体の動きを止めるような撮影ではフルサイズの優位性が目立つかもしれませんが、そのような撮影をしない僕にとってはマイクロフォーサーズの方がメリットは大きいです。

 

被写体別オススメカメラ

さて、ここまで自分が使っているE-M1推しの内容になりましたが、次は被写体別に考えてみたいと思います。

 

家族写真を撮る場合

家族写真を撮影する場合は、背景を大きくボカすことに拘るシチュエーションは少ないかと思います。なので、どの焦点距離でも写りがかなり良いオリンパスの12-100mm PROが使えるマイクロフォーサーズが撮りやすいです。僕が家族写真を撮るなら、広角から望遠までこの一本で対応できるマイクロフォーサーズを使いたいです。

 

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ポートレートを撮る場合

ポートレートを撮るならフルサイズのソニーのα7シリーズがいいです。フルサイズが良いと言っているのではなく、35mm判換算F1.4やF1.8のボケ量でAF精度が高いコントラストAFが使えるというのが一番の理由です。

  

商品や料理を撮影する場合

商品や料理を撮影する場合は、マイクロフォーサーズの方がいいと思います。僕自身、クリップオンストロボの多灯ライティングで撮影することがよくありますが、マイクロフォーサーズの方が被写界深度を稼げるので、より低いGNで撮影できます。つまり、ストロボも小型で済むので、機材が全体的に小さくなります。

 

背負って持ち歩ける普通の大きさのリュックの中には、カメラ2台、レンズ5本程度、ストロボ5台が入りますが、フルサイズで同じGNを実現しようとするとストロボが大きく重くなるのでちょっとしんどいかもしれません。

 

また、オリンパスの方がパソコンとカメラを繋いで撮影するテザー撮影はしやすいかもしれません。パナソニックで試したことがないのでハッキリ分かりませんが、オリンパスだと初代E-M1でも問題なくできます。パソコンからストロボの光量なども調整できるので撮影しやすいですね。

 

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イベントの記録、学校アルバム系を撮影する場合

これもマイクロフォーサーズが使いやすいと思います。ソニーのフルサイズ用のレンズと見比べると、高倍率ズームも12-100mm PROがありますし、望遠系もマイクロフォーサーズの方が揃っています。操作性もオリンパスのE-M1系やパナソニックのGH系の方が使いやすいです。

 

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書いた後に振り返ると...

さて、結局マイクロフォーサーズ推しになってしまいましたが、改めて振り返ってみてもやはりマイクロフォーサーズの方が多くのシチュエーションで使いやすいと思います。マイクロフォーサーズは操作性も犠牲にせず、小型軽量のバランスも良いです。レンズの選択肢も豊富なので、自分のスタイルに合わせてレンズもチョイスできます。

 

F2.8通しのズームを選ぶか、F4でいいなら高倍率ズームで高画質で撮影できます。35mm判換算F2.8で使える単焦点レンズは

 

12mm

25mm

42.5mm

75mm(絞り値はF1.8

 

※35mm判換算すれば、24mm、50mm、85mm、150mm

 

と、広角、標準、中望遠が揃っていて、F1.8でいいなら75mmもあります。

 

マニュアルフォーカスも含めれば、35mm判換算で

 

21mm

24mm

35mm

50mm

85mm

 

の焦点距離で、35mm判換算F2.8以下のボケ量を得ることができます。35mm判換算F2.8のボケ量をズームで使いたい場合を除けば、マイクロフォーサーズはかなり使いがってはいいでしょう。

 

僕は人物、商品、料理、建築系をよく撮るカメラマンですが、キヤノンのフルサイズ一眼レフからオリンパスのミラーレス一眼に変えて後悔したことは一度もありません。むしろ、使い勝手がかなり良くなって嬉しいことが多々ありますね。

 

カメラマンならキヤノンかニコン、という時代はもう終わったと思います。そう口にする人もまだまだ多いかもしれませんが、そういう方は今の時代のミラーレス一眼について知識も使用経験もないのかもしれません。かれこれ2年ほどオリンパスのE-M1で仕事をしていますが、十分快適に撮れていますよ。