カメラマンの知恵

カメラマンの方に役立つ話を書いていきます

カメラマンなら知っておきたいフルサイズだから高画質とは限らないという話



フルサイズは画質がいい。これはカメラ単体のイメージセンサーの潜在能力だけで見れば正しい見方です。ですが、写真を撮影する際は、

 

・レンズの性能

・手振れ補正の有無

・フォーマット毎の被写界深度の差

 

等により実際の画質は変わってきます。では、具体的にどういうケースで画質がどのような要素で左右されるのか?いくつかの例を見ながら解説していきます。

 

レンズの性能

最近のレンズは絞り開放からの性能が高いです。ただ、フルサイズ用のレンズで絞り開放からの性能を維持しようとすると大きく重くなってしまいます。機材の重量を無視するならば気にしなくてもいい項目ではありますが、現実的な重量を意識する人にとってはフルサイズで小型軽量のレンズで絞って撮影するか、それともフルサイズ以外のフォーマットで絞り開放からよく写り且つ小型軽量なレンズを使うか、とても悩ましい問題です。

 

経験してみると実感できると思いますが、重い機材をずっと持ち歩いて撮影する場合けっこうしんどくなります。フットワークの軽さは、撮影のモチベーション低下を招かないので重要な要素です。なので、軽量化を望むのであればあえてフルサイズを選択しない方がいいケースもあります。

 

手振れ補正の有無

手振れ補正が普及しだした時、補正効果は2段程度と性能が少し効果があるという程度でした。さらに、普及しだしたものは何かしら否定をするコメントが増えてしまう傾向と相まって、

 

・手振れ補正は最悪なくてもいい

・そんなものに頼るな

 

という風潮が少なからずありました。しかし、現在の手振れ補正は4段から5段程度あるのが一般的になってきていいます。これは、焦点距離200mmで1/6でシャッターが切れるぐらいの性能です。200mmを手振れ補正なしで撮ろうとすると、普通なら1/100程度。頑張って1/60ぐらいまでです。それも、相当慎重にシャッターを切った時の話です。ですが、手振れ補正があれば1/60〜1/100というシャッタースピードでは普通の感覚でシャッターが切れます。慎重にシャッターを切れば、1/6ぐらいで撮れてしまいます。そうなると、もう頼るなという次元の話ではありません。

 

シャッター速度をそれだけ遅くできるということは、ISO感度をそれだけ低く設定できるということです。4段5段と感度を落とせるということは、フルサイズで手振れ補正なしで撮るよりも、それ以下のフォーマットのカメラで強力な手振れ補正を利用して撮った方が高画質になります(フルサイズとそれ以下のフォーマットの高感度性能差は凡そ2段)。また、手振れが目立てばフルサイズであっても画質が悪くなるものです。強力な手振れ補正があれば、それだけ通常のシャッター速度でも安定感が増すので高画質に繋がります。

 

 

逆に言えば、フルサイズで全てのレンズで手振れ補正が行えるようになれば鬼に金棒状態になります。ただ、キヤノン・ニコンのフルサイズ一眼レフはレンズ側に手振れ補正が採用されていて、レンズによっては手振れ補正が効きません。また一眼レフ特有の前ピン後ピン問題が気になります。ペンタックスのK-1ならボディ内手振れ補正が効き、その効きの良さに注目されていますが、一眼レフなのでAFを多用する場合は少し不安が残ります。一方、ソニーのα7Ⅱならミラーレス一眼なのでAF精度面での不安も少なくなり、ボディ内手振れ補正を搭載しているのでその恩恵を受けることができます。

 

ただ、フルサイズのボディ内手振れ補正は、フルサイズより小さなフォーマットに比べて効果が若干劣る傾向があるので、そういう意味ではオリンパスのE-M1 Mark Ⅱと12-100mm PROによる手振れ補正6.5段分の方が少し優位になるかもしれませんね。

  

フォーマット毎の被写界深度の差

フルサイズとマイクロフォーサーズの被写界深度の差は2段です。これは、フルサイズのF8とマイクロフォーサーズのF4が同じ被写界深度になるということです。つまり、マイクロフォーサーズの方が常に2段程絞りを開けられる為、ISO感度も2段落とせることになります。

 

フルサイズでの優位性が2段だとすると、被写界深度の差でマイクロフォーサーズと差が無くなります。残るは手振れ補正の性能差になってくるので、そうなると実測3〜4段程のα7Ⅱと実測5段程のE-M1 MarkⅡ(12-100mm PROとの組合せなら実測でも6段程)なら、マイクロフォーサーズの方が薄暗い環境で被写界深度を稼ぐ際には高画質になります。

 

また、被写界深度の差が2段ということは同じ被写界深度の薄さにする場合も絞り値を2段開けらるので、ISO感度も2段落とすことができます。マイクロフォーサーズで一番開放絞り値が明るいレンズはF0.95で、これはフルサイズのF2相当のボケ量になります。フルサイズでF1.4で撮影したい場合はフルサイズを使う選択しかありませんが。フルサイズでF2相当のボケでいい場合は、マイクロフォーサーズでも撮影可能です(MF限定になりますが、キーピング機能や拡大機能を使えば快適にピント合わせができます)。

 

フルサイズでF2で撮影した写真と、マイクロフォーサーズでF0.95で撮影した写真の背景のボケ感はほとんど同じですが、ISO感度はマイクロフォーサーズの方が2段落とすことができます。

 

マイクロフォーサーズの低感度が許容範囲であり、且つ自分が望む被写界深度を得られるレンズがあるなら、ISO感度を2段落として高感度がフルサイズと同等になるマイクロフォーサーズはオススメです。詳しくは下記記事でも解説しているので併せてご覧下さい。

 

 

実際の撮影でフルサイズが優位に立つケースとそうでないケース

以上のように、フォーマットサイズによる被写界深度の差により、フルサイズの2段分の高感度性能の優位性は相殺されるケースが多々あります。その上、手振れ補正の能力で差がついてマイクロフォーサーズの方が優位に立つことも。

 

但し、動く被写体の動きを止めたい場合は、シャッター速度を落とすことはできない為、フルサイズが優位に立つケースの方が多いです。ただ、マイクロフォーサーズには40-150mm F2.8というレンズがあり、このレンズなら35mm判換算80-300mmをF2.8で撮影することができます。フルサイズで300mmで撮れるF2.8の望遠ズームだとかなり大きく重いので、機動性を考えた場合は300mm F5.6ぐらいのレンズになりますが、そうなるとフルサイズの優位性はレンズの開放F値で相殺されます。

 

それ以上の400〜600mmぐらいの望遠レンズになると、マイクロフォーサーズでもF5.6やF6.3という絞り値になるのでフルサイズの方が優位ですが、その分マイクロフォーサーズではフルサイズよりもレンズが小型軽量になるというメリットがありますね。

 

また、三脚を使ったり晴れた屋外のみでしか撮らないという場合は、フルサイズの最高性能である低感度で常に撮れるので、そのような状況のみで使用する場合はフルサイズの方がいいかもしれません。ただ、それでもマイクロフォーサーズとの差を鑑賞距離から見分けるのは難しいのではないかと思います。

 

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最後に

ここまでご覧になると、実際の撮影ではフルサイズの優位性がそれ程大きくないことに気づかれたかもしれません。ちなみに、フルサイズの高感度性能の優位性は、フルサイズより小さなフォーマットに比べて凡そ2段と書きましたが、マイクロフォーサーズで一番高画質なE-M1 MarkⅡとの差は1.3段程に縮まるので、さらにマイクロフォーサーズの方が優位になるケースが多くなるかもしれませんね。