カメラマンの知恵

独学でカメラマンになりたい人や今現在カメラマンの方に役立つ話を書いていきます

寿司職人養成学校のニュースから見えてくる飯炊き3年握り8年の本当の意味


昨年末、 寿司職人経験1年未満の人だけのお店「鮨 千陽」が、ミシェランガイド京都・大阪2016に開店から僅か11ヶ月で掲載されたというニュースは、多くの方が驚かれたと思います。

 

matome.naver.jp

 

寿司職人は一般的に約10年、いわゆる昔ながらの下積みを経験しやっと一人前になれると言われる中、どうやって寿司職人経験1年未満のスタッフだけのお店がミシェランガイド掲載を実現したのか?その背景には、3ヶ月で寿司職人を目指せる飲食人大学の存在がありました。

 

insyokujin.ac

 

今回の鮨千陽も、当時は飲食人大学の寿司マイスター専科の卒業生と生徒で切り盛りされていることで大きな話題となりましたが、飲食人大学では専門学校を出たから現場で少しは役に立つというレベルではなく、卒業したら即戦力になるというレベルを目指したカリキュラムになっています。

 

一般的な専門学校は、卒業したら就職に有利になったり、全くの素人よりも現場で役に立つということはあっても、即戦力になることは余程優れた学生でないと難しいです。そんな中でも、本当に現場で通用するレベルになることが可能なのはどうしてか?その理由として、カリキュラムの内容が良く先生も厳しいことはもちろんありますが、入学してくる人にある特徴があるのではないか?と僕は考えています。

 

写真も同じことができる?

さて、このニュースを写真に置き換えてみると、さすがに3ヶ月は難しいとは思いますが1年あれば十分現場で通用するカメラマンになれると感じています(ここでは、依頼されて撮影する広告カメラマンを想定して書きます)。

 

僕は写真学校とスタジオ勤務を1年経験してその後は独学です。写真学校とスタジオ勤務で撮影の基礎は学んだものの、即戦力のようなスキルはまだまだなかったので、スタジオを辞めた後は自分で研究をして実践に活かせるスキルを磨いてきました。

 

もちろん、研究をしてスキルを磨くことは今後一生続いていきますが、自分の中で振り返ってみると、ある程度のスキルになったと感じるのは独学して3年でした。ただ、僕の場合は子育てと両立している期間が長いので、まだ未婚の人で没頭する時間があると仮定するなら、1年に短縮できると思います。

 

しかし、これは撮影のスキルのみを考えた場合です。クライアントの依頼があり、その要望を満たす為の撮影スキルを習得することは1年あれば可能だと感じています。しかし、社会に出てカメラマンとして働いていくことを考えると、社会経験をある程度積んでいることが前提です。

 

寿司職人が飯炊き3年握り8年と言われていた時代

寿司職人は約10年と言われていた時代は、比較的若くして門を叩き、10年経験して30歳頃にやっと一人前になっていた時代です。今程気軽に転職を繰り返す時代でもなかったことを考えると、20代後半や30代で入門する人は少なかったはずです。

 

おそらくこの記事をご覧の方も経験があると思いますが、若いうちは大なり小なり人間性に欠ける部分があります。もちろん、若い時から立派な方もいますが、考え方や振る舞いを真似ていても、本質的な人間性はそう簡単に向上するものではありません。

 

寿司を握るスキルだけでなく、お客さんとのコミュニケーションや口から出る言葉等、全ての対応においてしっかりやれるようになるには、それなりに時間が必要です。その時間を稼ぐ為にも、飯炊き3年握り8年という概念に繋がったのではないでしょうか。

 

このニュースをきっかけに、飯炊き3年握り8年というのは古い考え方だという指摘が多くありますが、確かに今の時代には合わない考え方かもしれません。しかし、若い人が寿司職人の門を叩くのであれば、僕はプラスに働くと感じています。

 

若くして飲食人大学でスキルを習得し、そのまま現場に出る。それで上手くいくケースもあると思いますが、社会経験が少なさが引き金に起こる問題は少なくないはずです。 逆に先に社会人経験を積んだ30手前からそれ以上の人であれば、スキルを磨いて現場で即戦力として活躍することは難しくないと思います。

 

お客さんは何を見ているのか?

僕は独立をして2016年で8年目を迎えることができましたが、その中でいろんな方から様々な指導を頂きました。とくに若い時の言葉の選び方や使い方、対応の仕方等、いろいろ注意を受けたものです。おそらく、指摘を頂けたのは僕がまだ若かったからだと思います。これがいい歳の大人だったら、相手にされずにおしまいだったと思います...。

 

自分自身の経験から言えることは、商売は商品が良いだけでは続かないということです。とくに、自分自身が商品になるような職人の場合、商品はもちろん言動を含めて評価されます。僕自身様々な指導を頂いた反面、そっと去っていったお客さんも中にはいました。後から聞いた話では、写真は問題なかったけど...、という話を聞いて穴があったら入りたいという気持ちになったこともありまます。

 

カメラマンとしてのスキルは1年あれば習得できます。しかし、社会に出て仕事を続ける為には、写真を撮るスキルだけではやっていけません。商いの基本は、価値を提供しその対価として報酬を頂くことですが、提供する価値というのは何も商品だけではありません。商品を購入する前後の体験も含まれています。

 

商いを続ける為の価値を提供する為には、社会での経験やある程度の年齢が必要になります。まだ二十歳を少し超えたぐらいの歳なら、スタジオ勤務をしばらく続けるか、写真業界とは別のところで働きながらスキルアップを行い(独立後の集客という意味でも、違う業界で働く方がプラスになるケースがあります)、20代後半で独立するのが賢明です。

 

しかし、20代後半である程度社会経験がある人の場合は、昔の考え方に囚われる必要はないでしょう。今の時代は、昔と違い様々な情報収集ができるようになり、スキルアップの環境も整っていることが多いです。この時代に生きているなら、今の環境を活かして軽いフットワークで新しい道を進んでほしいですね。

 

ちなみに、僕の師匠は今回のニュースに対してこんな見方をしています。

 

fukaihanashi.hatenablog.com

 

「80点のアニメを85点にするには、その5点のために80点に費やしたエネルギー(コストと時間)と同じだけのエネルギーが必要になる。85点から90点にしようとすれば、さらに倍のエネルギーが必要になる」

 

これは僕も感じるところがあるので納得ですね。

 

興味がある方は、是非一読を。

 

 

f:id:photographerti:20160422181643j:plain