仕事柄商品撮影を行うことが多いのですが、商品写真撮影は職人技だなと毎回の撮影で感じています。どういうことかと言うと、商品写真を撮る時は撮影環境を精密に組み立てていくんです。直感やセンスも必要にはなりますが、どう撮ればどう仕上がるか?とイメージし、実際にセットを組み立ててそれを写真で実現する。なので、撮影の過程をしっかり説明でき再現もできます。と言っても、言葉だけではイメージできないと思いますので、今回は普段写真講座の受講生さんにしかお見せしないライティングの組立方を紐解いた写真を交えながら解説していきます。
それぞれ役割を担うストロボ
僕が撮影の時に何時もイメージするのは、被写体のそれぞれの面に対して、どのアングルからどんな質の光を当てるのか?ということです。
こちらの写真は、先日お客さんからの依頼で撮影した一点ものの皮財布です。この写真は完成したものなんですが、この写真を撮る為にストロボ3つと銀レフ1つを使っています。それぞれのライトは、当たり前ですが適当にセットしているわけではなく、それぞれに役割があります。では、3つのライトはそれぞれどのような役割があるのか?写真を見ながら解説していきます。
まずこちらの写真は、被写体の真上より少し奥の位置からトレーシングペーパー越しにメインライトを当てた写真です。このライトで、財布上部のハイライトとグラデーションを作ります。そして左手前に写っているのが、厚紙にアルミホイルを貼った銀レフです。この銀レフでメインライトを反射させることで、財布下部のハイライトを作ります。
横からセットを見るとこんな感じです。
続いてこちらのライトは、財布右側のハイライトを作る為に、ほんの少し右奥から財布とほぼ平行の高さから光を当ててます。この光は、20 × 30cmのソフトボックス越しの光になり、トレーシングペーパー越しの光ではありません。
続いてこちらのライトは、財布左側を少し明るくする為に左奥からトレーシングペーパー越しに光を当ててます。左奥のライトはメインライトよりももっと下にあって、財布とほぼ平行の高さから当ててます。先ほどの、横からセットを見た画像に【左奥のライト】とありましたが、そのライトですね。
そして、三つ同時に発光させるとこんな感じになります。財布自体はこれで完成ですが、この状態では左手前の銀レフが写り込んでいたり、左上がライトの反射で明るくなっています。
なので、左奥のストロボだけ発光を止めて、銀レフを抜いたカットを撮っておき、上の画像に合成します。そうして最終的に完成したのが、最初にお見せしたこちらの写真です。
銀レフを使うにしろライトを使うにしろ、被写体の表情を表現する為にどうしてもフレーム内に写り込んでしまったり、今回のように背景に必要ない反射が写りこんでしまう場合があります。その場合は、まず被写体だけ見た完成写真を撮り、その後に写り混むものを調整して別に撮っておき後で合成するのがベストです。その為にはフォトショップを手足のように使えるようになっておく必要がありますね。
レタッチャー程のスキルは求められないものの、これぐらいは簡単にできるようになれば、撮影の段階からフォトショップでできることとできないことが分かるので、撮影もスムーズに且つ問題なく対応できるようになりますよ。